運指譜と解析譜

こちらは新国立劇場でのオペラ『ドン・パスクワーレ』で伴奏した“エルネストのセレナータ”という曲のギター譜です。左が押さえる指を書き込んだ運指用の譜面で、右が和声進行等を書き込んだ解析用の譜面です。


僕は新しい曲に取り組む時は、このように楽譜を2部用意して「運指用」と「解析用」に分けて使います。小説の文章と同じく、音楽にも句読点のようなものがあるのですが、「。」や「、」の様に目に見える形で記されているわけではありません。そこで、楽譜の音符をよく見て、その骨格(=和声の流れ)を解析して楽譜に書き込んでいくのです。すると、句読点の場所がはっきりと見えてくるので色ペンで印をつけます。ここで言う句読点とは「Cadence(終止形)」の事なのですが、運指と合わせて各Cadenceの場所も暗譜すると、本番でより自由に歌えるようになるのです。


だいぶ専門的な話になりますが、Cadenceに次いで僕が意識するのは調性外の音を取り入れた特殊な和音(Neapolitan 6th、Italian/German/French 6th)や、Secondary dominantが解決する場所(例としてV/V → V, V/IV→IVなど)、それとSequenza(反復進行)です。Sequenza中は和声進行による“緊張と緩和”の流れが正常に機能しなくなるのです。(上の写真ではピンク色が各Sequenzaを、緑色が各Cadenceを示しています。)


運指と和声を暗譜する際は、それぞれに集中した方が効率が上がりますので、楽譜を分けるのはとてもお薦めです。

村治奏一

OtO hako

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